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2/01/2009

2009.02 レオナルドのエコ・ムゼオ

夢の完全エコ

“100人乗車可、騒音ナシ、燃料費ゼロ!”現在の不況+エコブームの世の中にそんな乗り物があったら大ヒット間違いなし。でもそんな都合の良い乗り物なんてあるはずが…あるっ!それもおよそ500年前に考案された乗り物で、今も実際に使われているのです。※但し水路限定でございます…。

 地元の足として活躍、500年前のアイデア

 イタリア・ルネッサンス期の巨匠レオナルド・ダ・ヴィンチ。最後の晩餐やモナリザ、日本でも2007年上野国立博物館で公開され50万人以上の来場客を呼んだ受胎告知など、画家としての顔が良く知られています。それ以外にも万能の天才と呼ばれるとおり、絵画の他、建築、土木(都市計画そのもの)、科学に天文学などとにかくどんな分野にも精通していた大天才、今デザインや建築を生業としている世界のクリエイター、アーティストにとっては大大大先輩といった所。ミラノにはダ・ヴィンチの博物館がありますので、機会があったらたっぷり時間をかけて(時間がないと全室に目を通しきれない!時間があっても全ては無理です…)まわってみる事をお勧めします。さて、冒頭に書いた夢の乗り物の考案者はこのダ・ヴィンチ。ここロンバルディア州を渡るアッダ川に、ダ・ヴィンチが設計した舟が今も走っているのです!
 さて肝心の舟ですが、Traghetto di Leonardo(レオナルドの渡し舟)と呼ばれ、レッコ県のインベルサーゴ(Imbersago)とベルガモ県のヴィッラ ダ・アッダ(Villa d'Adda )の間に流れるアッダ川を渡るために運行されています。“レオナルドの舟って当時から同じものを使ってるの?危ないじゃん!”ってそんなはずはありません。レオナルドのアイデアをもとに、よりスムーズに運行できるようにアレンジされ現代に蘇らせた舟なのです。原理はしかし、いたって簡単。対岸を結ぶべくピーンと張られた鉄のワイヤーに60㎡の舟がつながれているだけ。原動力は川の緩やかな流れのみで、進行方向に微妙に傾けられた舟を水の力が対岸へ押し出すように進めるのですが、60㎡という舟のこの大きさも流れを受け力に変えるひとつのポイントのようです。よって本当に燃料費はゼロ。それでも人間100人と5台の車を乗せることができるとか!船頭さんもたった一人(おそらく)で、乗客の対応、岸から舟を出発させる重要なワイヤーのひと引き、そして方向を定めるなどの微調整を全てこなしています。

ゆったりと進む船。私達が船着場近くに車を止め、周辺を散策しているわずかな間も、乗客はひっきりなしに訪れこちらレッコ側からベルガモへと渡っていきます。勿論アッダ川を渡る橋もありますし道路も整備されているのですが、思いの他多い利用客。観光客向けも狙って設置された舟なのでしょうが、1ユーロ弱という運賃も手伝いきっと地元の得意客も多いのでしょう。

レオナルドのエコムゼオ・アッダ

このアッダ川周辺はParco Adda Nord(北アッダ公園)とされていて、現在アッダ川周辺都市が連合し、この公園地域で生きる、そしてこの環境生かすためEcomuseo Adda di Leonardo(レオナルドのエコムゼオ・アッダ)と言う名のもとで公園の整備、環境保護や文化的遺産の修復、環境を生かして地域の学童向けの課外教育そして観光にも力を注いでいるようです。レオナルドの渡し舟はこのエコ・ムゼオの中核的存在と言えます。レオナルドファンならずとも、このエコ・ムゼオ周辺都市はそれぞれ歴史的な教会や邸宅などの見所がありますし、ユネスコ世界遺産で日本でも有名というCrespi d'Adda(クレスピ・アッダ)もその名の通りアッダ川沿い。川の長さ分移動距離もあるので、短時間で全部をまわるのは無理ですが、訪れてみる価値は十分あるかと。2008年は1時間20分でインベルサーゴから14kmの見学ツアーも夏のみ企画されていたようなので、そんな機会に恵まれたなら、普通の観光とは違った視点で小さな旅が楽しめるかと。

ところでこの日は対岸に渡ってベルガモまで行く時間がなく、ここまで来たにも関わらず、私達は渡し舟に乗船しませんでした。しかし川沿いの散歩を楽しみ、船着場近くのレストラン兼バールに入りジェラートをテイクアウト。そこでケーキの陳列ケースにレオナルドの渡し舟の模型が飾られているのを目敏く見つけ“写真を撮ってもいいですか?”と聞くと、“どうぞどうぞ!”と笑顔付のいい返事。このお店、店員さんもウェイターさんも大変対応が良くそしてお手洗い(旅人にとっては重要なポイントです)もきれいなので、お勧めですよ。

しかしこの寒いのに外でジェラート!?と思いますがイタリア人、結構寒くても歩きながらジェラート食べてます。私はさすがに…車に戻って暖房つけてからいただきました。ここ北イタリアにもカーニバルとともに新緑がちらほらと見え初め、春はしっかり訪れてくれています。次回は初夏の風を感じながら、ジェラート食べつつベルガモに渡ってみたいものです。

 

〔参考ページ〕レオナルドの渡し舟に行く前に訪れてみてください。

Ecomuseo Adda di Leonardo 

http://www.addadileonardo.it/

 

Museo Nazionale della Scienza e della Tecnologia "Leonardo da Vinci"

レオナルド・ダ・ヴィンチ記念国立科学技術博物館

http://www.museoscienza.org/

 

Crespi d'Adda  http://www.villaggiocrespi.it/(日本語ページあり)