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4/01/2007

2007.04 キアラ・ディニス(CHIARA DYNYS)展

キアラ・ディニス(CHIARA DYNYS)展
疲れを癒す憩いの展示スペース

4月のミラノは色々なイベントが盛り沢山。特に見本市会場では、MiARTというミラノ最大のギャラリー見本市が行われましたし(331日~42http://www.miart.it/)、4月下旬からは、毎年恒例の国際家具見本市ミラノ・サローネ(Salone del Mobile Milano)が始まるので、ちっちゃなミラノの街中を、世界各国のあらゆる人々が歩いている様な状態になることが予想されます。デザイン関係のお仕事をされている方は、ミラノ・サローネ情報には大変敏感に反応される事と思われますが各種媒体で専門の記者さん達が繰り広げられる生リポートを楽しみにしまして、ここではまったく見本市に関係のない美術展の情報をお伝え致しましょう。

キアラ・ディニス(CHIARA DYNYS)展
LUCE NEGLI OCCHI(瞳の中の光)”

現在開催中の展覧会です。キアラ・ディニス、日本ではおそらくまだあまり知られていない作家さんなのではないでしょうか(プロフィールを見ますと、日本でも)私も今回はじめて作品を目にし、その存在を知りました。今回の展覧会では、未発表作品5点を含む16点のインスタレーション作品が展示されています。 

 会場となるRotonda di Via Besana“ベサーナ通りのロトンダ(円形の建物)”は、少々ですが街の中心から外れた所にあります。1693年には病院で亡くなった死者を埋葬する場所つまり墓地であったので、やはり衛生面などを考えて、若干中心地より外れた所に建てられたようです。その後時代と共に、ミラノの情勢が変わる度にナポレオン全盛の時代には記念碑、霊廟(パンテオン)にしようという計画が持ち上がったり、その後オーストリア軍の手に渡ったり、慢性病患者専用の病棟となったり色々な経過を経るのですが、ありがたいことに現在は修復され、絵画、デザイン、建築、写真などあらゆるジャンルの美術を展示する展示空間として生まれ変わっております。

 さて、キアラ・ディニス。1958年マントバ生まれ1989年ミラノへ移ってからは更に本格的なアーティスト活動を拡大し、イタリアは勿論、ドイツ、フランス、ニューヨーク等、世界各国で数多くの展覧会を行っています。そして経歴を見てみると、1993年に東京でも作品展示を行ったようですね。

展示会のポスターにも採用されている2007年の新作“Shanghai”は、入口の真正面に配置さています。カラフルな蛍光灯が地面からにょきにょきと生えているようなイメージのこの作品、「何を表現しているのだろうか?作家は上海に行ってカラフルな街並みやネオンをみたのか?!」と思いMIRRO2に質問したらSHANGHAI(シャンハイ)というゲームを表現したんでしょ!カラフルなネオンはゲームの棒そのものだよ。」とのお答え。皆さんはシャンハイゲームってご存知ですか?決してマージャンではございません。カラフルに彩色された棒(先が鉛筆のように尖がっている)をバラッっと机上に小山を築くようにランダムに置き(または投げ?もしくは一まとめにしたものを机に立てるように置いて手を離してバラッとやる)他の棒を動かさないように、一本ずつ慎重に棒を取っていくゲームだそうです。つまりこの作品はその“バラッ”と棒を撒いたときの様子を表していると言える訳ですね。
 順路はまるで迷路のように、しかし空間を十分に生かして構成されています。16の作品を展示するために細かく区分けされた16の展示室には、それぞれ展示に沿った名前がつけられています。(ちなみにはじめの部屋はミカドという名が付けられていました
 暗い場所に入ると必ず躓くという特技を持つ私。障害物はないか?トリックがあるんじゃぁないか?と手を伸ばしながら恐る恐る入った青光りする暗闇の空間“Pesi Lievi”という展示室には、ボワッと光るブルーの水槽が横たわる部屋と同名の作品(2001年)が。Pesi Lievi、“軽い重さ”とでも訳したらよいのでしょうか。近づいて見ると水の底には人(男女両性?)の体が映写され浮き上がっているように見える不思議な作品です。"Gold"と名付けられた空間には“Piramide(ピラミッド)”(1994年)と共に金のモザイクを施した彫刻作品が。モザイクに当てた光が壁に反射し、星のように細かな輝きをランダムに与え、幻想的な空間が築かれています。"Glitter gates"2001年)は絶え間なく部屋全体が色を変える作品。空間に入り込んだ観客も作品と共に色を変えていく事になります。青ざめるとか、腹黒い奴めとか頬が赤らむとか感情や性格を色によって言い表す事って良くありますが、実際に人の色が変わる様子を見る機会ってありませんし、何とも面白い!壁と睨めっこして色の変化に一人身を任せるのも良い鑑賞法なのでしょうが、ぜひ人の色変化を見てみたいものです。見るためにはカップルもしくはグループで行かれる事をお勧めします。もしくは他の人が来るのを気長に待つという手もありますね。
 まったく巧みに、恐れを知らず新しい表現方法に挑戦するダイナミックさを持ちながら、女性ならではとも言える繊細な仕上げで作品の完成度をガンッと上げる事が出来るアーティスト、キアラ・ディニス。最後の展示室"Made in China"は同タイトルの2005年作の映像インスタレーション。イタリア人女優Milena Vukotic(ミレナ・ヴコティッチ)とのコラボレーション短編映像+関連立体作品で締めくくられます。

ところで、Rotonda di Via Besanaは以前病院として機能していたためか、広々とした庭があり、当時を忍ばせる回廊が建物を取り囲み、大変ゆったりとした心地よい空間となっています。ベンチも沢山ありゴミ箱も沢山設置され、子供が遊ぶためのブランコもありという事は、スーパーで買ったパンを持参して、ぼんやり日向ぼっこをしながらランチを取る事だって可能でしょう。そして、今回この展示会はなんと入場無料なのです!サローネにお越しのデザイナーさん、記者さん達もぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

展示情報
CHIARA DYNYS - LUCE NEGLI OCCHI/ LIGHT TO THE EYES
場所:Rotonda di Via Besana MILANO ITALIA
期間:2007331日~510

MIRRO展示情報:Arte e teatro per la Quaresima in Cattolicail Vangelo di Marco
“マルコによる福音書”14人の現代作家による作品展示 200737日より322日まで。ミラノカトリック大学中庭にて開催中
カトリック大学ニュースのホームページ(展示取材記事)
http://www2.unicatt.it/pls/catnews/consultazione.mostra_pagina?id_pagina=13023