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3/01/2007

2007.03 ミラノカトリック大学企画展参加作品制作

ボンドも国によって異なる?
ミラノカトリック大学企画展参加作品制作

 明日(37日水曜日)から、ミラノカトリック大学(l’Università Cattolica)にて開催される企画展に参加している。展示のテーマは『マルコによる福音書』。毎年、復活祭というキリスト教の重要な祭日を控えた今の時期:四旬節に行われる恒例の展示とのことである。
 ところで、大学の卒業旅行といえば春。皆さんの中でも春にヨーロッパへ旅行をされた方は多いのではないでしょうか。その時、有名な観光地においてお祭りが行われるというので予定を組んだものの、まったくホテルが取れなくてこまったなんて方もいらっしゃるのでは?その有名なお祭りは、復活祭(イースター)のお祭りではなかったでしょうか?復活祭シーズンはカトリック信仰が浸透した国々では学校も会社もお休み。1週間程度のバカンスになります。実は私自身、はじめてのヨーロッパ半一人旅が丁度その年の復活祭にあたっており、何の予備知識もなく、ホテルも予約せずにこの時期に無謀にもアッシジ(聖フランチェスコの生誕の地として、カトリック信者の巡礼の地ともなっている)に行こうと計画し、どこの宿も満室で路頭に迷いかけるという、本人は真剣でしたが何ともお恥ずかしい体験をしております。
 そんな大きな喜びの祭日、復活祭前の四旬節は、じっと静かに自分の日々の生活を振り返り、節制と回心に励む時期。よって、この展示も福音書を現代の画家による作品を通し、聖書の場面を振り返ってゆく、作品につけられる専門家による解説に耳を傾け、各場面に対する理解を深めていくという意味合いの大変強いものなのです。
 はじめにお話をいただいた時は、内容の深さもさることながら、ミラノで一番重要な大学での展示ということでたじろぎました。しかし、担当してくださった教授のあたたかい対応に安心し、心を決めて制作をはじめたのでした。

 引き受けてしまってからが、また大変。
作品は屋外の特設クリスタルBOXに展示されるということで、サイズの規定が85cmx85cm以内。という事は80x80程度の作品を作るわけです。しかし依頼者のイメージは前回制作した銅版画なので、版画でこのサイズを埋めなければなりません。期間はこの時点ですでに1ヶ月弱を残すのみ。いろいろな方法を考えましたが結局は自力が一番早道と覚悟し、自宅に唯一ある(昨年のクリスマスに買いたてホヤホヤの)ミニミニプレス機を使用して、6つの銅版に別々のイメージを作り上げ、最終的に一つのパネルに並べて貼るという形を取りました。作品については、展示が始まってからまたご報告いたしましょう!
 パネルのサイズも特殊であったため、木工所で木を切ってもらいMIRRO2に手伝ってもらいながら自宅で組み立て。釘を使うと凹凸がでるかもしれないし、使用する木材の厚みも中途半端なので、抜けてしまうかもしれないという心配があったため、ボンドで組み立てます。日本ではよくやっていた作業なのですが、こちらではこれまた初の試み。一体こちらのボンドの粘着力はどれぐらいのものなのか、メーカーはどれを選んでみたらよいものか。イタリアでも勿論、色々な種類のボンドが販売されています。近隣国生産のものもあるので、ドイツのボンドなんて何だか強そうだなぁと思いながら、何度か文房具屋や工具屋に通いましたが、結局選んだのはミラノに製造会社があるという“ビナビル(VINAVIL)”。日本で木工用ボンドといったらあの黄色に赤のと思い浮かぶぐらい、こちらではこのビナビルという商品名が木工用ボンドの代名詞になっている程浸透している商品(少なくとも良くボンドを使う方の間では)とのこと。使い方も日本のボンドと同じで接着面を圧迫して固定し、半日もすれば完全に乾きます。乾燥後はビナビルのほうが日本のボンドより硬く、紙よりはまさに若干固めの素材の接着に適したボンドという印象を受けました。 

 さて、パネルの接着はこちらで購入できる素材で十分対応できましたが、紙と紙との接着は、やはり日本のでんぷんのりが一番。天然の繊維で出来た紙、和紙を洋紙と組み合わせて作品のベースとしたため、やはりお互いがじんわりと馴染むでんぷんのりが必要になってきます。さすがにこれはミラノでは見つけることが出来ませんでした。幸いにも今回は、手持ちのもので賄えましたが、次回はやはり輸入するかはたまた帰国して買いだめするか制作の道はまだまだ険しいものがあります。素材探しはどこにいても“永遠の課題”とさえ思えてきます。

 結局“作品は直接持ち込みますから”と言い、締め切りをのばしていただいて、更に約束の時間の数分前までパネルと格闘。何とか作品提出を終えました。いよいよ明日から展示開始です。

展示:Arte e teatro per la Quaresima in Cattolicail Vangelo di Marco
カトリック大学・四旬節のためのアートと演劇
“マルコによる福音書”14人の現代作家による作品展示 200737日より
ミラノカトリック大学中庭にて開催中
カトリック大学ニュースのホームページ
http://www2.unicatt.it/pls/catnews/consultazione.mostra_pagina?id_pagina=12887