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1/01/2009

2008.12 イタリアの現代美術館

イタリアの現代美術館

MartMuseo di arte moderna e contemporanea di Trento e Rovereto

クリスマスという一大イベントを、夫の実家があるミラノよりず~っと北、オーストリア国境近くのボルザーノ県で過ごした私達。出発前、プレゼントの用意や長男の遠征用離乳食の準備からはじまり、帰省中は親戚への挨拶回り、食べ過ぎ飲みすぎ…ハプニングとして叔父の入院も重なり、気も使って胃も弱ってと帰路につく頃には心身共にもうヘトヘト。車の窓から見える雪化粧した美しい山々さえ、粉砂糖をたっぷりかけたパンドーロ(クリスマスには必ずお目見えする山の形をしたパン(甘いのでケーキと言うべきか?)。パネットーネというドライフルーツが入ったパンと共に、12月から1月にかけて一人2個以上は消費するんじゃないだろうか?)を連想させグッタリ。

このままローテンションで帰りたくないよね!と叫んだところで、“ロヴェレート出口”という標識が目に入る。早速寄り道決行!


ヨーロッパ最大級の近現代美術館がこんな所に!

「ロヴェレートといえば、有名な美術館があるよ。」という相棒の一言で目的地は決定。とりあえず道はわからないけれど、街の中心を目指す。「で、美術館の建築は既存の建物をいかしながら新しい部分を造りつなげた面白いものなんだよ。設計者はボッタだよ。」またもやマリオ・ボッタのプロジェクトにここで出会う事になるのか。

「あ!レンガのでっかい建物があるよ!あれじゃない?」レンガの建物に滑らかなアーチとくればボッタか…と思って迷い込んだ住宅街の建物はどうやら教会と集合住宅で、美術館とは全く関係なし。「えー、でもきっとこれもボッタが関わったんじゃん?」などと言いながら住宅地を抜けるとすぐに美術館への標識を発見。クリスマス直後、人っ子一人いない巨大美術館前。それだけでも寒い雰囲気なのに、車をパーキングに置いて扉を開けると本当に寒さで肌がピリピリ。長男をマフラーでぐるぐる巻きにして美術館入り口まで小走りで移動する。

20021215日にオープンした巨大な美術館の建物は、ボッタと地元の技術者ジュリオ・アンドレオッリとのコラボレーションによって実現されたそう。透き通った青空を見渡せる、クーポラ状に組まれた天井、その骨組みの影が中央広場にクロスするように広がり、近現代美術館らしさを演出。イタリアで、ここまでピリリと清潔感を感じさせる建物にはなかなかお目にかかれないので、これだけでモヤモヤした気分も新鮮になってきます。

チケットは常設展、企画展共通。黄色いMartシールを洋服にぺたっと貼れば、出入りも自由。チケットと一緒にロヴェレートの市街地図がもらえ、地図にはお得な特典チケットもついています(提携の喫茶店でのコーヒー一杯無料券や、お買い物割引券など)。チケットカウンターの奥にはミュージアムショップが。書籍も充実してなかなか良い品揃え。そこでこんな小物を発見!実用的マルチプルアートって感じ?洗濯バサミがついたハンガー、ヨーロッパでは見かけないものでして(中華街ではたまに売っていますが)お土産に買うと喜ばれたりするアイテム。 しかし…ちょっと高いよね。

今回の企画展はIl secolo del JAZZ。その名の通りジャズをテーマにした展覧会。ポロックやバスキアによるジャズのイメージをキャンバスにぶつけた作品は勿論、ウォーホールのイラストレコードジャケット、マンレイにピカビアetc、アートだけでも有名どころが名を連ね贅沢な上、ジャズフェスティバルのポスターやジャズをテーマにした映画やアニメの上映、楽器や雑誌にいたるまでジャズ好きコレクターにはたまらないアイテムがずらり。広い会場の中、数多くの個室を作って時代やカテゴリーごとに見せる工夫がされていたが、あちこちから色々な音楽がどんどん聞こえてくるので集中力が保てない。大学時代、終わらぬ課題を抱え気分転換に入ったジャズ喫茶。大音量の音楽に包まれコーヒーを飲んだだけで、白紙のレポートを真っ白のまま持ち帰った事をふと思い出す。

同時にこの時は印象派展も別室で開催していたのでそちらも見る。モネにルノアール、ゴッホ、ゴーギャンなど、こちらは静かにゆっくり歴史的画家の作品を鑑賞。まったく別の空間に来た気分になる。「長男君は8ヶ月にしてモネもゴーギャンもみちゃうんだね。私がゴーギャンを初めてみたのは大学の時だよ。印象派展なんて横浜そごう美術館でそれらしき展示を見たのがはじめだったのに。」とぶつぶつ言いながらもう一つの展示室へ。

1900-1950年のイタリア美術近代現代作品がずらりと並ぶMartのコレクション展。ジャコモ・バッラそしてイタリア未来派といったらすぐに頭に浮かぶボッチョーニの実力を感じさせるデッサン。デ・キリコも沢山ある。Martは同じくロヴェレート出身の未来派巨匠デペーロの膨大なコレクションを所有し、2009年1月17日に長らく修復のため閉鎖されていたCasa d'Arte Futurisuta di Depero (デペーロの未来派アートの家) を再オープンするという。 今回のコレクション展もそれにちなんだものと言える。

展示を全て回ったところで時刻は正午を過ぎていた。館内のカフェテリア&レストランでパニーニとシュトゥルーデル(りんごパイのような、この辺りでよく作られているドルチェ)をテイクアウトし、長男のオムツを代えて(Martにはオムツがえベットも病院なみのものが設備されている!)、寄り道リフレッシュは大成功。楽しい気分で帰路につくことができました。

 

 

 

参考ページ

mart

http://www.mart.trento.it/

 建築に興味のある方はこのページでプロジェクト詳細のビデオが見られます。

http://www.mart.tn.it/context_video_big.jsp?ID_LINK=509&page=1

デペーロの未来派アートの家詳細

http://www.mart.trento.it/context_mostre_depero.jsp?ID_LINK=318&page=1