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6/01/2007

2007.06 風邪にも負けず、美術展。

風邪にも負けず、美術展。

先週今週と、ここミラノは不安定な気候。薄手のコートや何ならセーターを引っ張り出したいような寒さの後には、湿気を伴ったムワッと暑い日が待っている…。「のどが痛い」とつぶやきゴホゴホ咳をするサラリーマン、電車でブンブン鼻をかむ女子学生。“風邪が流行ってるのか。いやだなぁ”と思いつつ、体だけは丈夫が取柄の私も、気まぐれな初夏の天気と疲労のためか、ついに流行りものを頂いてしまいました。

 風邪をひいたらどうするのか?

ミラノに来てから、そういえば風邪を引いたことがありませんでした。風邪を引いたらとりあえず、ビタミンCを取る。アスピリンを飲む(風邪薬というイメージは日本では薄いアスピリン。こちらの人は何かに付けてアスピリンを常用するのです)。暖かくして寝る。仕事の予定をずらす。仕事を休む。そして行きたい美術展を我慢する…しかし、これが一番の難関だったのでした。

 前回ご紹介しましたODIEMMEの展示“L’ARTE SOSTIENE L’OPERA DEL MONDO”を友人達と観に行くという計画。(詳細は前回5月のブログをご覧ください!)チャンスを逃すと2日後には展示終了というタイムリミットもあり、自分の体力を過信して強行。幸いその日は暖かい日差しに恵まれ、喉の痛みも体のだるさも一瞬忘れるような爽やかな風も時折感じられ、たわいもないおしゃべりをしながら会場となったCasa dell’Energiaへ向かいました。
 初日のオープニングパーティーと講演会では、来場者が会場を埋め尽くし、あまりにも大盛況であったため、そしてすぐ後に予定が詰まっていたため、作品をまともに見ることができませんでした。しかしこの日は、会場には私達以外一切来場者なし!ゆっくり鑑賞できたので良いとも言えますが、これだけ静かだと、もっと積極的に広告をするべきではないのか?という疑問も同時に湧いてきます。とにかく数点売却済みの印が付いていたので、チャリティーの目的はそれなりに果たせているのでしょう。

 都市とは?~私達もその景色の一部なのか。

 会場で一際目を引く存在が、マルコ・チルニリアロの作品4点の小品と1点の大作からなる“交差点シリーズ”。交差点は、十字路(インクローチョ)とも言いますね。十字というと十字架(クローチェ)を思い出します。日々の生活の中で何気なく通り過ぎ、すれ違う(インクロチャーレ)人々や物事、画面全体に交差点を描き入れるということは、かなり引いた視点を取っていると思われます。ちょうど横断歩道でふと足を止めて、欄干に手をかけ身を乗り出して下を覗き込むのに似た感覚。普段ならば群集の中にまぎれて、数多くのすれ違いに身を委ねている私達。この絵を見ていると、普段見られない、つまり普段はそこを渡り通り過ぎる一人の人でしかない自分が、その景色の全貌を第三者の視点から眺めるという不思議な感覚に誘われます。いつかご本人に、どのような気持で描かれたのか伺うことができたなら、またこの場でお伝えしたいと思います。
 そして忘れてはいけないMIRROのメンバー、ロッコ氏の作品。小ぶりであるのが幸いしたのか数点すでに売約済みとなっていました。オープニングでも「これはミラノの景色か?なにか行ったことのあるような…」という感想も聞かれた作品。無機質でありながら生き生きした色を使い、しかし何かノスタルジーを誘う画面。約3メートルの壁面、個々に当てた暖色系の照明がさらに効果をあげて、それぞれの絵と静かに対話できるようなスペースとなっていました。

 お粥のかわりに何を食べる?

 展覧会ツアーを終えた後、それ見たことか!といわんばかりに私の風邪は悪化。数日まともに会話ができないほどの咳に悩まされ、下を向いては息ができず、いや今回はホントに辛い一週間を過ごしました。そんな中でイタリアではお粥のかわりに(お粥も食べますが)pasta in bianco(パスタ・イン・ビアンコ~白いパスタ)を食べるということも知りました。つまりは何も味付けしていない、ゆでただけのパスタということなのですが…。さすがにそれでは物足りないので、皆さんバターを乗せたり、オリーブオイルや粉チーズをかけて食べるそうです。季節の変わり目、皆さんもどうぞ体調にはお気をつけて!

5/01/2007

2007.05 アーティストが描く街とは?

L’arte sostiene l’opera del mondo展
アーティストが描く街とは?

春を見ぬうちに夏がもうやって来たか?と思うほど暖かい日が続いていたミラノ。しかしここへ来てググッと温度が下がり先日は8℃。雨も降りました。水不足解消のきっかけとなってくれると良いのですが…。“地球がおかしい”という声をよく耳にしますね。こちらイタリアでも、温暖化の問題はよくメディアに取り上げられております。映画の中では何度もヴェネチアは海底に沈んでいますし…。

 日曜に車が使えない都市なんて?

ミラノには、車でのミラノ侵入が禁止される日曜日があります。お役所が日時を定め告知がなされ、その日曜日は特別の許可を得た車、特定の職業の人の車以外が街を走ると罰金を取られます。特に暖房などで空気が汚染される冬には数回行われるこの自動車禁止Day、せっかくのお休みに家族で出かけたい方は不便よね~と思いつつ、ミラノの排気ガスも温暖化に一役買っているんだなぁ、そこまでの処置が行われるという事は、普段私達は一体どんな空気を吸って生きているのだろう?と色々な想いもまた頭をめぐります。
 少しネガティブな導入になってしまいましたが、少し前には気が付かなかった事、無感覚になっていた事を、住む場所を変えた事によってか、あらためてリアルに考えることが多くなって来ました。比較する対象が出来るとやはり、Aに対してBはどうだ…とつい何かにつけて気になってしまうものなのです。日本では東京で仕事をしていましたが、狭い道に多くの車、交通渋滞は当たり前。しかし交通機関は地下鉄バスとかなり頻繁に、そして時間通りに到着するというのは、当たり前の事でした。仕事で新規のクライアントに会うなんて時は、時間に遅れず願わくは10分ほど早めに到着するというのが理想でしたから。しかし、同じ都市でもミラノの公共交通機関はよくストライキのためにストップしますし、電車も普通に遅れます。はじめは信じられませんでしたが、慣れてくると案外今までバスを使って行っていた場所も徒歩で行ける事に気付いたり、その日に組んでいた予定をずらしたりすることが案外苦もなく出来るようになってきます。人間の適応能力も不思議と発達してくるものなのです。そんな風に慣れてきたところで用事を抱え東京に戻ると、24時間日曜日も勿論開店している店、正確に到着する電車、動く人の波に逆に息苦しさを感じてしまう事も。息苦しさの反面、近代的な高層ビルが立ち並び、六本木ヒルズの様に住居、文化、産業すべてを内包してしまうような総合施設を中心とした都市計画、衛星都市も駅ビルを中心として、交通機関の巡回の便宜を全て配慮し住みやすく便利な街づくりを行っている日本は、やっぱり便利。特にコンビニのコピーは…と連挙しはじめるときりがなくなってまいります。さてさて、本当に住みやすい街ってどんな街なのでしょう?

 アーティストの視点で描かれる都市

 イタリア人が都市に描くイメージとは一体どんなものなのだろう?今、MIRROのメンバーROCCO FIUMARAが取り組んでいる作品は、そんな好奇心を持つ私にとっては見逃せない展覧会のための作品。主催者側から依頼されたテーマは“Uno sguardo sulla citta’punto di vista insolito”いつもと違った視点で見た都市。イタリアの若手アーティスト達が、それぞれの視点で異なる表現方法で、それぞれの都市を描くという趣向です。

作品は全て販売する事を前提にしており、今回の収益はケニア、ナイロビの学校建設計画(Maurice Otunga)のための資金に充当されるとの事。絵描きになると、必ずと言って良いほどこういったチャリティー計画に作品を寄付するように声をかけられる機会があります。絵描き達は寄付をするならば、しっかりそのお金が目指すところに届いてほしいものだ!とまず願いながら、腹を決めて作品を提供することになります。近年度重なる自然災害等で、募金や物的支援などを行われた方は実感を持ってらっしゃる事と思いますが、残念な事に行方不明になるお金や資源は後を絶ちません。こちらの団体は、収益をどこの国にどのような事に使ったかという事を大変正確に毎年公表している事が大変印象的。提供する側も心おきなく仕事ができるというものです。出品者の中にはLetizia FornasieriやGiovanni Frangiなどを筆頭に(日本では紹介されていないと思いますが)大変名の知られた実力派の画家の名が。その最新作が観られると共にもしかしたら購入のチャンスもあるという展覧会。アートの中に表現された、架空の街がナイロビの小学校の一部に形を変えて実現する現場を、今回は初日に(実際は搬入時に一足お先に!)観にいってまいります。


展示情報
Associazione ODIEMME (OPERE DEL MONDO)
L’ARTE SOSTIENE L’OPERA DEL MONDO
Uno sguardo che cambia I luoghi
場所:Casa dell’Energia (p.zza Po,3 MILANO ITALIA)
期間:2007年5月16日~5月31日
 10
時~18時まで。日曜休館 入場料無料

出展作家;Marta Carenzi,Giovanni Chiaramonte,Marco Cirnigliaro,Giuliano Crivelli,Rocco Fiumara Giancotti,Letizia Fornasieri,Giovanni Frangi,Francesco Toniutti

4/01/2007

2007.04 キアラ・ディニス(CHIARA DYNYS)展

キアラ・ディニス(CHIARA DYNYS)展
疲れを癒す憩いの展示スペース

4月のミラノは色々なイベントが盛り沢山。特に見本市会場では、MiARTというミラノ最大のギャラリー見本市が行われましたし(3月31日~4月2日http://www.miart.it/)、4月下旬からは、毎年恒例の国際家具見本市ミラノ・サローネ(Salone del Mobile Milano)が始まるので、ちっちゃなミラノの街中を、世界各国のあらゆる人々が歩いている様な状態になることが予想されます。デザイン関係のお仕事をされている方は、ミラノ・サローネ情報には大変敏感に反応される事と思われますが…各種媒体で専門の記者さん達が繰り広げられる生リポートを楽しみにしまして、ここではまったく見本市に関係のない美術展の情報をお伝え致しましょう。

キアラ・ディニス(CHIARA DYNYS)展
“LUCE NEGLI OCCHI(瞳の中の光)”

現在開催中の展覧会です。キアラ・ディニス、日本ではおそらくまだあまり知られていない作家さんなのではないでしょうか(プロフィールを見ますと、日本でも)私も今回はじめて作品を目にし、その存在を知りました。今回の展覧会では、未発表作品5点を含む16点のインスタレーション作品が展示されています。 

 会場となるRotonda di Via Besana“ベサーナ通りのロトンダ(円形の建物)”は、少々ですが街の中心から外れた所にあります。1693年には病院で亡くなった死者を埋葬する場所…つまり墓地であったので、やはり衛生面などを考えて、若干中心地より外れた所に建てられたようです。その後時代と共に、ミラノの情勢が変わる度にナポレオン全盛の時代には記念碑、霊廟(パンテオン)にしようという計画が持ち上がったり、その後オーストリア軍の手に渡ったり、慢性病患者専用の病棟となったり色々な経過を経るのですが、ありがたいことに現在は修復され、絵画、デザイン、建築、写真などあらゆるジャンルの美術を展示する展示空間として生まれ変わっております。

 さて、キアラ・ディニス。1958年マントバ生まれ1989年ミラノへ移ってからは更に本格的なアーティスト活動を拡大し、イタリアは勿論、ドイツ、フランス、ニューヨーク等、世界各国で数多くの展覧会を行っています。そして経歴を見てみると、1993年に東京でも作品展示を行ったようですね。

展示会のポスターにも採用されている2007年の新作“Shanghai”は、入口の真正面に配置さています。カラフルな蛍光灯が地面からにょきにょきと生えているようなイメージのこの作品、「何を表現しているのだろうか?作家は上海に行ってカラフルな街並みやネオンをみたのか?!」と思いMIRRO2に質問したら…「SHANGHAI(シャンハイ)というゲームを表現したんでしょ!カラフルなネオンはゲームの棒そのものだよ。」とのお答え。皆さんはシャンハイゲームってご存知ですか?決してマージャンではございません。カラフルに彩色された棒(先が鉛筆のように尖がっている)をバラッっと机上に小山を築くようにランダムに置き(または投げ?もしくは一まとめにしたものを机に立てるように置いて手を離してバラッとやる)他の棒を動かさないように、一本ずつ慎重に棒を取っていくゲームだそうです。つまりこの作品はその“バラッ”と棒を撒いたときの様子を表していると言える訳ですね。
 順路はまるで迷路のように、しかし空間を十分に生かして構成されています。16の作品を展示するために細かく区分けされた16の展示室には、それぞれ展示に沿った名前がつけられています。(ちなみにはじめの部屋はミカドという名が付けられていました…)
 暗い場所に入ると必ず躓くという特技を持つ私。障害物はないか?トリックがあるんじゃぁないか?と手を伸ばしながら恐る恐る入った青光りする暗闇の空間“Pesi Lievi”という展示室には、ボワッと光るブルーの水槽が横たわる部屋と同名の作品(2001年)が。Pesi Lievi、“軽い重さ”とでも訳したらよいのでしょうか。近づいて見ると水の底には人(男女両性?)の体が映写され浮き上がっているように見える不思議な作品です。"Gold"と名付けられた空間には“Piramide(ピラミッド)”(1994年)と共に金のモザイクを施した彫刻作品が。モザイクに当てた光が壁に反射し、星のように細かな輝きをランダムに与え、幻想的な空間が築かれています。"Glitter gates"(2001年)は絶え間なく部屋全体が色を変える作品。空間に入り込んだ観客も作品と共に色を変えていく事になります。青ざめる…とか、腹黒い奴め…とか頬が赤らむ…とか感情や性格を色によって言い表す事って良くありますが、実際に人の色が変わる様子を見る機会ってありませんし、何とも面白い!壁と睨めっこして色の変化に一人身を任せるのも良い鑑賞法なのでしょうが、ぜひ人の色変化を見てみたいものです。見るためにはカップルもしくはグループで行かれる事をお勧めします。もしくは他の人が来るのを気長に待つという手もありますね。
 まったく巧みに、恐れを知らず新しい表現方法に挑戦するダイナミックさを持ちながら、女性ならではとも言える繊細な仕上げで作品の完成度をガンッと上げる事が出来るアーティスト、キアラ・ディニス。最後の展示室"Made in China"は同タイトルの2005年作の映像インスタレーション。イタリア人女優Milena Vukotic(ミレナ・ヴコティッチ)とのコラボレーション短編映像+関連立体作品で締めくくられます。

ところで、Rotonda di Via Besanaは以前病院として機能していたためか、広々とした庭があり、当時を忍ばせる回廊が建物を取り囲み、大変ゆったりとした心地よい空間となっています。ベンチも沢山ありゴミ箱も沢山設置され、子供が遊ぶためのブランコもあり…という事は、スーパーで買ったパンを持参して、ぼんやり日向ぼっこをしながらランチを取る事だって可能でしょう。そして、今回この展示会は…なんと入場無料なのです!サローネにお越しのデザイナーさん、記者さん達もぜひご覧になってみてはいかがでしょうか。

展示情報
CHIARA DYNYS - LUCE NEGLI OCCHI/ LIGHT TO THE EYES
場所:Rotonda di Via Besana MILANO ITALIA
期間:2007年3月31日~5月10日

MIRRO展示情報:Arte e teatro per la Quaresima in Cattolica“il Vangelo di Marco”
“マルコによる福音書”14人の現代作家による作品展示 2007年3月7日より3月22日まで。ミラノカトリック大学中庭にて開催中
カトリック大学ニュースのホームページ(展示取材記事)
http://www2.unicatt.it/pls/catnews/consultazione.mostra_pagina?id_pagina=13023

3/01/2007

2007.03 ミラノカトリック大学企画展参加作品制作

ボンドも国によって異なる?
ミラノカトリック大学企画展参加作品制作

 明日(3月7日水曜日)から、ミラノカトリック大学(l’Università Cattolica)にて開催される企画展に参加している。展示のテーマは『マルコによる福音書』。毎年、復活祭というキリスト教の重要な祭日を控えた今の時期:四旬節に行われる恒例の展示とのことである。
 ところで、大学の卒業旅行といえば春。皆さんの中でも春にヨーロッパへ旅行をされた方は多いのではないでしょうか。その時、有名な観光地においてお祭りが行われるというので予定を組んだものの、まったくホテルが取れなくてこまった…なんて方もいらっしゃるのでは?その有名なお祭りは、復活祭(イースター)のお祭りではなかったでしょうか?復活祭シーズンはカトリック信仰が浸透した国々では学校も会社もお休み。1週間程度のバカンスになります。実は私自身、はじめてのヨーロッパ半一人旅が丁度その年の復活祭にあたっており、何の予備知識もなく、ホテルも予約せずにこの時期に無謀にもアッシジ(聖フランチェスコの生誕の地として、カトリック信者の巡礼の地ともなっている)に行こうと計画し、どこの宿も満室で路頭に迷いかける…という、本人は真剣でしたが何ともお恥ずかしい体験をしております。
 そんな大きな喜びの祭日、復活祭前の四旬節は、じっと静かに自分の日々の生活を振り返り、節制と回心に励む時期。よって、この展示も福音書を現代の画家による作品を通し、聖書の場面を振り返ってゆく、作品につけられる専門家による解説に耳を傾け、各場面に対する理解を深めていくという意味合いの大変強いものなのです。
 はじめにお話をいただいた時は、内容の深さもさることながら、ミラノで一番重要な大学での展示ということでたじろぎました。しかし、担当してくださった教授のあたたかい対応に安心し、心を決めて制作をはじめたのでした。

 引き受けてしまってからが、また大変。
作品は屋外の特設クリスタルBOXに展示されるということで、サイズの規定が85cmx85cm以内。という事は80x80程度の作品を作るわけです。しかし依頼者のイメージは前回制作した銅版画なので、版画でこのサイズを埋めなければなりません。期間はこの時点ですでに1ヶ月弱を残すのみ。いろいろな方法を考えましたが結局は自力が一番早道と覚悟し、自宅に唯一ある(昨年のクリスマスに買いたてホヤホヤの)ミニミニプレス機を使用して、6つの銅版に別々のイメージを作り上げ、最終的に一つのパネルに並べて貼るという形を取りました。作品については、展示が始まってからまたご報告いたしましょう!
 パネルのサイズも特殊であったため、木工所で木を切ってもらいMIRRO2に手伝ってもらいながら自宅で組み立て。釘を使うと凹凸がでるかもしれないし、使用する木材の厚みも中途半端なので、抜けてしまうかもしれないという心配があったため、ボンドで組み立てます。日本ではよくやっていた作業なのですが、こちらではこれまた初の試み。一体こちらのボンドの粘着力はどれぐらいのものなのか、メーカーはどれを選んでみたらよいものか…。イタリアでも勿論、色々な種類のボンドが販売されています。近隣国生産のものもあるので、ドイツのボンドなんて何だか強そうだなぁと思いながら、何度か文房具屋や工具屋に通いましたが、結局選んだのはミラノに製造会社があるという“ビナビル(VINAVIL)”。日本で木工用ボンドといったらあの黄色に赤の…と思い浮かぶぐらい、こちらではこのビナビルという商品名が木工用ボンドの代名詞になっている程浸透している商品(少なくとも良くボンドを使う方の間では…)とのこと。使い方も日本のボンドと同じで接着面を圧迫して固定し、半日もすれば完全に乾きます。乾燥後はビナビルのほうが日本のボンドより硬く、紙よりはまさに若干固めの素材の接着に適したボンドという印象を受けました。 

 さて、パネルの接着はこちらで購入できる素材で十分対応できましたが、紙と紙との接着は、やはり日本のでんぷんのりが一番。天然の繊維で出来た紙、和紙を洋紙と組み合わせて作品のベースとしたため、やはりお互いがじんわりと馴染むでんぷんのりが必要になってきます。さすがにこれはミラノでは見つけることが出来ませんでした。幸いにも今回は、手持ちのもので賄えましたが、次回はやはり輸入するか…はたまた帰国して買いだめするか…制作の道はまだまだ険しいものがあります。素材探しはどこにいても“永遠の課題”とさえ思えてきます。

 結局“作品は直接持ち込みますから”と言い、締め切りをのばしていただいて、更に約束の時間の数分前までパネルと格闘。何とか作品提出を終えました。いよいよ明日から展示開始です。

展示:Arte e teatro per la Quaresima in Cattolica“il Vangelo di Marco”
カトリック大学・四旬節のためのアートと演劇
“マルコによる福音書”14人の現代作家による作品展示 2007年3月7日より
ミラノカトリック大学中庭にて開催中
カトリック大学ニュースのホームページ
http://www2.unicatt.it/pls/catnews/consultazione.mostra_pagina?id_pagina=12887

2/01/2007

2007.02 カステロ・ヴェッキオ美術館~カルロ・スカルパの建

“孤高の建築家“の暖かな仕事
カステロ・ヴェッキオ美術館~カルロ・スカルパの建築(ヴェローナ)
 日本では、もしかしたらここイタリア以上に名の知られた建築家なのかもしれない。
カルロ・スカルパ(Carlo Scarpa)。ヴェネチアでうまれ、繊細な仕事を残し、日本文化に大いに影響を受け、(1978年仙台市を訪問中に亡くなったという。)静かに、しかし最後まで独自のスタイルを貫いた「孤高の建築家」。

 この場を借りてクリエイターの皆さんに、建築の知識も浅い私ごときがお伝えすることもない...口にするのもおこがましいほど有名な建築家なのだが、あえてこの名を出してしまうのは、やはりその仕事の素晴らしさを“オォっ!”と声をだして伝えたくなったからである。

 

ところで...
 昨年はイタリアルネッサンスの巨匠、アンドレア・マンティーニャ(Andrea Mantegna)の没後500年。そこで2006年9月16日から、つい先日の2007年1月28日まで(本来は1月14日まででしたが、異例の延長ロングランとなりました!)マンテーニャをテーマとする展覧会が、画家ゆかりの地パドヴァ、マントヴァ、ヴェローナにて開催されました。過ぎた展覧会の紹介で申し訳ないのですが、いや本当に素晴らしかった!

 今回は長期ながらも時間が取れず、訪れることができたのはヴェローナ会場のみ。しかし...第一会場となったパラッツォ・デッラ・グラン・グアルディア (Palazzo della Gran Guardia)には、確かにマンティーニャの秀作が大集結!中でも地元ヴェローナのサン・ゼーノ教会の暗がりの奥、主祭壇にていつもはひっそりと輝きを放っている三幅対祭壇画(Trittico di San Zeno)が、美術館の開けた明るい空間にドンッと置かれていたのにはびっくり。この絵の展示が目的である展示会に来ているにも関わらず、自分の目を疑う始末。この祭壇画にこれほど近づいて、前から後ろからグルグルまわって見ることのできる機会というのは、生きているうち二度とないだろうなぁ...。
 展覧会は終了してしまいましたが、ヴェローナに来る機会があったなら、アレーナは勿論ですが、ぜひサン・ゼーノ教会に足を運んでみてくださいね。

 前置きが長くなってしまいましたが、今回マンティーニャ展の第一会場でチケットを購入した際に、“同じチケットでカステロ・ヴェッキオにも入れますよ。”と言われ、チケット代を無駄にはすまい!と意気込み向かった14世紀の古城(カステロ=城、ヴェッキオ=古)。現在は美術館としてヴェローナの主要な観光拠点となっており、もしあなたがイタリア美術愛好家ならばここで寝泊りしたくなるほどのコレクションが揃っています。ピザネッロ、ベリーニ、フランチェスコ・カロト、通常はマンティーニャ(マンティーニャ展期間中は、第一会場にすべてのマンティーニャは持ち去られていた)などの華々しい絵画、ヴェローナの歴史的財産ともいえるジュエリー、武器、宗教絵画、彫刻等々。そしてそれらを引きたたせ、訪れた人々の長い美術館めぐりを、より心地よい雰囲気に変える魔法。それは古城の存在感をそのままに、窮屈な空間を開放的に、採光をより自然に、そして城の歴史を忠実に...と繊細な配慮が施し尽くされたカルロ・スカルパの建築計画に他ならないのでした。

 建築雑誌等の媒体では、天気の良い日にくっきり撮影された写真が採用されていることが多いですよね。私達がヴェローナを訪れた日は、最高に寒く、どんよりと今にも雪が降り出しそうな雲に空は覆われ、更に街全体が霧に覆われ、行き交う人々も八割方が毛糸の帽子を耳が隠れるように深くかぶる(MIRRO2人も、あまりの寒さにデパートで帽子を買いました。)ような最悪の天候。しかし、そんな中で見るこの偉大な建築家の仕事は、意外にも暖かく、そしてやさしく感じられたのでした。
 ガラス・鉄が多く使われ、比較的鋭角なデザインのパーツ、かっちり組まれた格子扉など、一見冷たく見えるアイテムが数多く取り入れられているのに、この暖かさは一体どこから?そして何故ゆえに?
 謎を解くべく美術品を見ながら、また入口にもどりゆっくり空間を眺めながら歩いてみました。そこで気付いた事。私は建築はド素人ですのでついデザインばかりに気を取られ、肝心な事 “この美術館(城)は完全に修復され、その上にデザインが施されている” をすっかり忘れていたのでした。お恥ずかしい。
 1Fの展示室は壁の多くの面積がガラス張りになっており、中庭とまるで壁なしで繋がっているような錯覚を起こすのですが、鉄の窓枠と分厚いガラスは外気をぴったり遮断し、室内にはかなり大きな暖房機が各所に目立たぬよう設置されています。この展示室は彫刻がメイン。普通の美術館よりは若干高めの黒の台座に設置された彫刻が多い(これも建築家の意図)ので、台座と同じ色に塗られた低い位置にある暖房が、まったく気にならないのです。
 外光がふんだんに射し込む展示室の照明は、暖色系。それに対して窓の少ない展示室の照明は蛍光灯。塔の展示室においては、古い天井の木の梁をむき出しにし、年数を経た木独特の存在感が、それだけでは白すぎる壁をたしなめるように落ち着かせ、調和しています。そして多くの美術誌が逃さず解説するメインの建物と塔の2階部分をつないだ橋。鉄とコンクリートと木がうまく使われて、建物に馴染んでいる上に、霜が降りるほど寒い日だって、滑らない。

(滑る靴を履いていたら話は別ですが...)靴底がぴったり地面についてる安心感。だから、欄干にしがみついてちょっと身を乗り出して、中庭と城壁、そしてあえて建物の一部をカットした形で設置された騎馬像の彫刻までもじっくりと見ることができます。手がちょっとかじかんでも、扉は自動ドアが多いので大丈夫...。人に悟られないほど自然な心くばり。そして調和。日本人に愛される建築家カルロ・スカルパ。繊細な魂を持った偉大な師であったのだろう。
 閉館の放送に、後ろ髪ひかれる思いで美術館を後にしながら、ヴェネチアにあるという彼の多くの作品を「見に行こう!」「オォ!」っと、いつ実現するかわからぬ計画に会話を弾ませる私達なのでした。


カステロ・ヴェッキオ美術館のホームページ
http://www.comune.verona.it/castelvecchio/cvsito/

12/01/2006

2006.12 年末の大仕事~イタリアのクリスマスプレゼント事情

『年末の大仕事~イタリアのクリスマスプレゼント事情』

日本で言うところの“お歳暮”にあたるのがイタリアでは“クリスマスプレゼント”。その力の入れようといったら、まったくただ事では済まされない。去年と違うプレゼント、少しでも個性

的なプレゼントを探すことに全力を傾ける人々のパワーには、圧倒されるばかりである。ミラノに限って言うと、12月7日の聖アンブロージョ(Sant'Ambrogio 聖アンブロシウス:ミラノ市の守護聖人)の祝日前後に行われる「オーベイ!オーベイ!(Oh bey Oh bey)」というイベント、そしてミラノ見本市会場で行われる、毎年恒例の国際職人(手工業)見本市は、そんな北イタリア市民の格好のプレゼント狩りの場となる。いずれも楽しいイベントなので、機会があればいつか詳しく紹介したい所だが...本題に入ろう。

私たちは一体何者なのか?何のお仕事をされているのですか?そんな質問に答える機会が多い今日この頃。『はい、デザイナーです。』『はぁ、彼は教師で。』『ええ、絵描きです。』出会う人と目的によって少しニュアンスを変えながら第一声を発し、その後具体的な説明を開始することになる。ひとつに絞れたらいいのにと、考えることもしばしば。そんな中でも最近『はい、2人ともアートをやってます。(私たちはアーティストです)』と答えるのもいいなと思えるようになってきた。大きく飛躍した表現で~嫌味にも思われず~それなりにインパクトを与える事ができるという事も。

さて、そんなアートをやっている私たちに、友人を介して“BIGプレゼント”がもたらされたのはつい先月の事。『某弁護士事務所のクリスマスプレゼントに現代作家の版画を』そんな手間はかかるが大変魅力的なお仕事のお誘いであった。

その後すぐに直接依頼者から電話があり、はやくもその翌日夕方、私たちMIRRO計2名はそれぞれの近作を持参し、依頼者の事務所へ向かった。

現代近代美術の彫刻、絵画作品がさりげなくちりばめられた事務所内は大変モダンな空間。今は生産されているはずもない某有名デザイナーの照明、座り心地も見た目も素敵な椅子にピカピカの大テーブルがある会議室。プレゼン後すぐに具体的な話となり、私たちはそのクリスマスプレゼントの全貌を知ることとなる。

●某弁護士事務所スペシャルクライアントへのプレゼント:毎年新しく見出した現代美術作家による限定部数180枚リトグラフもしくはそれに相当する版画(スペシャルカバーに入っている)+毎年新たに発掘し吟味した現地直送ワイン6本セット(ラベルはプレゼントとなる絵画作品をレイアウトした、これまた限定物!)

いったい一人のクライアントに対して、いくら金額をおかけになるのだろうか?!

「いや~うちらのプレゼントレベルとは雲泥の差だね。」

「金額が真心ってわけじゃないでしょう。」

「でももらったら相当うれしいねぇ~。」

北イタリアの夜、寒さに手が悴む11月の帰り道、形式上返事待ちではあったが、すでに私たちの頭は、これだけのものを数週間で仕上げなければならない緊張感と、MIRRO1の作品の場合は銅版画、MIRRO2の作品の場合原画はアクリルなのでリトグラフかセリグラフ...さてどこに印刷を頼もうか?というこの地ではまだ未開拓の問題にぶち当たって熱くなっていた。

結果としてはMIRRO1の銅版画に決定し、作品カバーから大まかなワインラベルのデザインまで全て、私たちが行うこととなった。

嬉しい!と祝杯を挙げる暇もなく、『もらったら相当うれしいプレゼント』納品までその時点で残すところ約10日。180枚の銅版画印刷を版画工房に発注、規定外のサイズの印刷を、品質良く仕上げてくれる印刷屋を探すことから版下作業まで怒涛の10日と予想外の事態、そして更に予想外の巻き返しを経て、つい先週めでたく納品。

期限に間に合い、その後の梱包作業に支障をきたすことなく納品を果たした私たちを見る依頼者の眼差しと安堵の笑顔から、この仕事が私たちから彼にとっての相当うれしいプレゼントになったことを確信した。

[イタリア風 ほんの気持ち]
ところで・・・
イタリアではクリスマスの時期、驚くほどクリスマスパーティーやお食事会が頻繁に行われます。職場の仲間、友人同士、教会(=ご近所同士)で、趣味の学校(語学等々)で。“肝心の24日は教会のミサに行き、25日は家族とできれば食卓をかこみたい。それまでに、是が非でも彼・彼女に会って○○を渡さなくては!”パーティーの多さは会いたい人に会う機会を増やすために、実際必要なのかもしれません。日本ではよく贈り物を渡すとき「つまらない物ですが」「お口にあいますかどうか?」と言いますが、ちょっとしたものを…というような謙虚なイタリア語も存在します。~Pensiero (気持ちや意見という意味もありますが、ちょっとした贈り物や思いやりなどを指す言葉です。)~市場で買ったワイン一本でも、オリジナルワイン6本+絵画でも、ぬいぐるみでも毛皮のコートでもPensieroはペンシエロ。「ほんの気持ちです…!」日本もイタリアもここらへんの感覚は、意外と近いものがあるようです。Merry Christmas!

11/01/2006

2006.11 貧しさのディナミズモ JANNIS KOUNELLIS展より

Jannis Kounellis(ヤニス・クネリス)。発音が難しいのでクウネルス、クーネ リスetc...とカタカナ表記は変わるものの、美術好きな方なら一度はこの名前 を耳にしたことがあるのでは?今まで開催されたどの展覧会においても、この作 家のプロフィールは1960年代後半、イタリアで生まれた美術運動アルテ・ポーヴ ェラ(il movimento dell’Arte Povera “貧しい芸術”)のメンバーとなり.. .という書き出しから、1969年にローマの画廊Galleria L’Atticoでの“12頭の 生きた馬を用いた展示”に至り、その後の世界レベルの飛躍的な活動が解説され て行く。日本においても何度か企画展示が行われ、作家本人が来日し、制作をし たこともある。“ヨゼフ・ボイスに続く現代美術において最も重要な位置を占め る芸術家”といった解説も見受けられるこのアーティストの、美術史上の位置や 価値はその道の専門家におまかせし、ここでは現在ミラノで開催中の展覧会“JANNIS  KOUNELLIS 展”の印象を少しでもお伝えできれば。 今回の展示を一言で表現すると...“調和”この言葉が真っ先に思い浮かぶ。 会場と展示作品の調和。それが見事になされた時、観客もまた空間に溶け込む様 な、何とも言い難い感覚を味わうことになる。心地よい緊張感と共に、静けさの 中で作家のメッセージをじっくりと受け止める事ができる、作品観客相互にとっ て、幸運な出会いの空間が実現している。 展覧会会場のアルナルド・ポモドーロ財団は、ミラノ中央駅から地下鉄2番線、Sant ’Agostino(サンタ・アゴスティーノ)駅にて下車、路面電車14番に乗り、左手 に建設中のスーパー、右手に教会が見えればそこからは目と鼻の先。時間があれ ば、公園と街路樹、引っ切り無しに往来する散歩中の犬を眺めながら地図を頼り に歩くのも、また心地良い道程。Via Andrea Solari(アンドレア・ソラーリ通り )の左手に、どう考えても倉庫か工場?という風情の建物が見えたら、それが“ アルナルド・ポモドーロ財団”。入ってびっくり3,000㎡の巨大な展示空間なので ある。 財団の名となり、中心人物であるアルナルド・ポモドーロ(Arnaldo Pomodoro) は、現代イタリアを代表する彫刻家である。イタリアに興味のある方なら、イタ リア文化会館のロゴマークを今一度見ていただきたい。そのデザインの中に、欠 けた球から機械の部品のような物がザワザワと覗いているポモドーロの代表的な 彫刻を発見できるはず。 彫刻家が計画した展示会場と言うだけあって、空間すべてが巨大作品を受け入れ るためのアイデアに満ちている。1Fから4Fは吹き抜け状態になっており、しっか り固めた地面が全面にあるのは1Fのみ。(地下もあるがパネルに塞がれており、 内部を確認する事はできなかった。)2〜4Fは通路に空中孤島のようなスペースが 段違いにくっついた形。SF映画の巨大宇宙船内部を思い浮かべると近いイメージ かもしれない。エレベーターは全てガラス張り。階段・通路にも視界をさえぎる ような壁はなく、あらゆる角度から展示作品を鑑賞できる。天井もガラス張りで 、自然光を十分に生かしている。天井付近に、移動式クレーンが備え付けられて いるのが見える。会場奥の鉄壁は搬入口か?作品がどんなに大きくとも、重くと も、作家の意向を満たす展示を実現するための設備が整っている。 さて、ここで肝心のクネリス作品展示へ話題を移そう。 会場に入るとすぐに見える590cm×590cm×高さ260cm鉄の壁、四方すべてが閉ざさ れ、一定の間隔で肉の塊がぶら下がっている、異様な黒い箱。ふと足元を見下ろ すと、肉の真下の床が滴り落ちた血痕に汚されているのに気付き、ドキッとする 。目線をそらすと鉄の壁の上から、厚手の本がこれでもかと重なり、もたれ合っ ているのが見える。この不思議な鉄壁の閉鎖された部屋は1997年に計画された作 品の再現“無題”(全ての作品タイトルが無題。つまりタイトルなし)。圧倒さ れながらも肉に近付き、展示期間中に腐敗しないものか、鼻を近づけ確認してみ たりする。 今回の展示の中で一番幅を占めていたのが、2260cm×590cmの金属の壁で覆われた 巨大な迷路状の空間。(勿論これも無題。)小高く盛られた石炭の脇に入り口が あり、この作家が好んで使ってきた素朴な素材、コーヒーの粉、古びた毛布、麻 袋、歪んだ机に教会の鐘などを使った作品が、各曲がり角や突き当りに配置され 、独特の空間を形作っている。 入場から1F、観客はこれら巨大な作品の中に放り込まれ、戸惑い、作家の意図に もまれながら作品と作品の間を巡る訳だが、歩き回りながらも、備付けにしては 妙に動きある鉄柱が要所要所に聳え立っているのが目に付く。これもまた作品で 、8m40cmもの高さの鉄柱が4本!会場に点在しているのだ。 展示会場の高さが8m40cm以上あることを知っていただいたからには、ぜひ3Fに上 がって、今度は上から下を覗いてみてほしい。入口近くの肉がぶら下がった壁作 品の内側には、何やら染みが広がっており、全ての本が画集だったり、写真集だ ったりするのがはっきりと確認できる。血と肉と芸術、過去の展覧会パンフレッ ト。芸術の朽ちてゆく様なのか、はたまた肉と精神の関わりを表したものなのか ?ぐぐっと心ゆくまま、踏み込んで決して落ちないように覗いてみてほしい。迷 路作品の中で動く人々の頭が見える。窓辺に配置された色ガラスの作品を通し、 外光が色を帯びて室内に射し込んでいる。ランプが多数配列された作品は、上の 方にあるランプの火が消えかかっている様子まで確認できる。長い会期中、何度 オイルを入れ替える事になるのだろう。 93年にヴェネチア・ビエンナーレで公開されていた、様々な帆のインスタレーシ ョンは窓側に配置され、光を十分に受けている。風を受け船を進めるために作ら れた帆は、自由で開放的な印象。しかし広い空間に船なしの帆がぷらりと浮かぶ 様からは、孤独、哀愁もまた感じずにはいられない。 受付の隣に設けられた掲示板には、展覧会記事を掲載した雑誌、新聞の切抜きが 丁寧にはられている。どの紙面にも、イタリアが誇る最も重要な芸術家2人、堂々 とした深みある容貌の笑みをたたえたクネリスとポモドーロ氏の写真が。1936年 生まれということは現在70歳。“貧しい芸術”運動から現在まで、作家の膨らみ 続ける実力と影響力をあらわす展示として、大変見ごたえのあるものとなってい る。 “JANNIS KOUNELLIS展〜ATTO UNICO” 2007年2月11日まで開催中 会場:アルナルド・ポモドーロ財団(イタリア・ミラノ市)  巨大な工場を改装し、コンサートにも対応したギャラリー空間。事務所も開かれ た空間にあり、丸見え(!)なので、ポモドーロ氏にお目にかかれる可能性も高 い。 http://www.fondazionearnaldopomodoro.it/ exibart.com ~ イタリア国内の展覧会情報サイト http://www.exibart.com/profilo/eventiV2.asp/idelemento/31974