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12/01/2007

2007.12 クリスマス事情

Buon Natale! ミラノのクリスマス事情その2(一年越し!)』

はやいもので、2007年ももう終わりに近づいてまいりました。去年のこの時期も、AQUENTさんのブログにイタリアのクリスマス事情を書かせていただきましたね。ぐるりと回ってクリスマス。一年っていう時間も過ぎ去ってしまえばホントに“あ”っという間に思えるものですな。

 去年は突然舞い降りたお仕事で、クリスマス前までに納品の版画刷りに精を出していたMIRROですが、今年はクリスマス一週間前にMIRRO2が勤め先から風邪(イタリア人は本当によく風邪をひく…ような気がする)をもらってきたために、家に篭りっきり。おかげさまで実家にも帰れず、壮大なミサが行われるミラノ大聖堂(Duomo)にも、近所の教会にも行けず、ベッドの上で幸か不幸かこれまた突然入った内職と、おかゆディナーで静かなイブを過ごしております。

…それにしても、朝から毎時1発か2発ぐらいの割合で、爆竹の破裂音が何処からともなく聞こえるのには閉口です。中華街のように派手に“パパパパパ~ァァン!バリバリバリッ!!”と連続で点火してくれればこちらも「おぉっ!」っとその気になってくるのですが、“パァァァーン”と一発のみ。かえってドッキリ。心臓に悪いですよ。

プレゼント、もらいますかあげますか?

本日24日。中心街は相変わらずにぎやかなのでしょうが、住宅街は路駐の車もいつもより少なく、先ほど風邪には欠かせぬ!とリンゴを買いに行ったスーパーでも、いつもの混雑振りは見られませんでした。この時期は帰省するかもしくは学校も職場もほとんどお休みなので、家族全員で冬のヴァカンスに繰り出す方々が多いように思われます。『クリスマスは家族(身内)で、復活祭はどなたとでも(好きな人と)。(Natale con i tuoi, Pasqua con chi vuoi)』こんなフレーズをよく耳にするのですが、確かにクリスマスは家族、親戚そろって食卓を囲む家庭が今も多いようです。家族で過ごさないと子供達はクリスマスプレゼントがもらえないから?いえいえ、そんな事はないですよ。プレゼントは幼きイエス様(Gesù Bambino)が持って来てくれるのですから!

サンタクロースも今は一般的ですが、こちらでは、クリスマスプレゼントは幼きイエス様がロバに乗って持って来てくれるものなのだそうです。昔は窓辺にロバのために干草を少し置いておき、翌朝それがプレゼントに変わっているというプロセスもあったようですが、今は干草を手にいれるのはなかなか難しいかと。それはさて置きクリスマスはイエス様の誕生日。その本来の意味を考えると、こちらの方が断然説得力があります。この日に家族で過ごすというのも、聖家族がはじめて子・父・母と揃った日なのですから、これまたやっぱり納得。日本ではなんとなく、ケーキを食べてプレゼントをもらって嬉しい日で終わってしまっていたクリスマスですが、ここに来て納得することばかりです。やぁ、物事にはやはり起源があるものなのですよ~。(注:イタリアでも勿論ご家庭によっては、サンタさんがプレゼントを持って来てくれます。他にもプレゼントを持って来てくれる聖人やキャラクターが存在しますが…それはまた次の機会に。)

何事にも好奇心を持つことは大切!ならばプレゼントの起源は?お誕生日にプレゼントをもらうのなら、私達がイエス様にプレゼントをあげなければいけないのでは?なぜ親しい人にプレゼントを贈ったり、子供がプレゼントをもらったりする日になってしまったの?と、そんな疑問もフツフツとわいてきます。とにかくこちらミラノのプレゼント商戦は、サッカーの試合より激しいものがありますから。「やりすぎ、商業主義に偏りすぎは、勿論よくないけどね。」私の(正確には“皆の”です)師であり友人であり母のようでもあるシスターはこう言います。サンタクロースの起源になったと言われる聖ニコラウスが貧しい娘に金貨をプレゼントしたという話もその起源と言えますが、“イエス様ご自身が私達への贈り物である→頂いたこの大きな贈り物(喜び)を皆に分かち合いたい→プレゼントを親しい人へあげる習慣”という自然な公式が商業主義とうまく絡み合い、今の形になっているという考え方もある。と。またまたやっぱり納得。プレゼントを誰かにあげるとき、何を想像して選ぶのだろう、そしてあげるのだろう。喜んでほしいなという気持ちがなきゃ、プレゼントの意味って無に等しい。

心を込めて誰かにプレゼントを贈ったことはありますか?もらった瞬間ウレシイッて気持ちになりますか?

先週末、体調の悪さを怠け心のせいと思い込みながら無理やりミラノ大聖堂近くへ行った時、人ごみとイルミネーションがあまりにも凄かったので、負けじとシャッターを切ってみました。まさに今年からミラノ市としてイルミネーションを大改革するという試みがなされているようなのですが、成果はいかに?「週末ここらに来る人の大半は、ミラノ郊外から来ている人達だよ」と誰かが言っていました。皆イルミネーションを見に来た…わけではなく、両手いっぱいに紙袋をさげています。中身はプレゼントなのでしょうね。喜んでもらえるプレゼントを探すのは、大変だけど嬉しい、嬉しいけど疲れる。疲れながらもキラキラピカピカ光に溢れた夜景を見れば、また買い物する意欲が湧いてくる…ようならば、市のライトアップ大作戦も成功と言えるのかもしれません。

 

写真1:ガレリア内特設イルミネーション。幻想的なブルーです。

写真2:スカラ座前のイルミネーション。建物に天使のイメージが映写されています。

写真3VITTORIO EMAMUELEⅡ通りからミラノ大聖堂にかけて。 

写真4:ミラノ大聖堂と巨大クリスマスツリー。大聖堂のてっぺんの黄金のマリアのライティングはいつも通りですが、何よりも目立つように感じます。

11/01/2007

2007.11 忘れがたき…!?



日本人の故郷へのノスタルジア

しばらく日本に帰っておりません。今は円安なのでチャンスと言えばチャンスなのですが、仕事や引っ越し、日常の細かな雑事に追われて計画がたてられないうちに2007年が終わろうとしております。トホホです。離れていれば尚なつかしき我が故郷。私の姉は私と違って博学な(勉強家という意味を込めて)国語教師なのですが、10月の詩の授業で室生犀星の“ふるさとは遠きにありて思ふもの”を取り上げたと言っていました。家を出たからといっても今の時代、“故郷に錦をかざる”か“夢破れ落ちぶれて帰るのか”といった厳しい状況はいまや聞かれませんし、ホームシックという言葉や症状はあるにせよ、ふるさとを思いひとり涙ぐむ...状況に追い込まれる事もあまりありません。(興味本位にWikipediaでノスタルジアという言葉を見てみましたが、19世紀末までには、精神医学のカテゴリとしての「ノスタルジア」への関心はほとんど消え失せてしまった。とあります。納得。)会いたい人にすぐに会えない寂しさ、食べたい物がすぐに手に入らない口寂しさというのは勿論ありますが!

イタリア人の日本へのノスタルジア

大層なタイトルをつい付けてしまいましたが、2006年夏に長崎から北海道まで『日本横断10日間鉄道の旅』を試みたMIRRO2(イタリア人)は、日本へは良き思い出の意味でのノスタルジアを感じる事がしばしあるようです。例を挙げると屋台でおじさんが太い腕でガシガシと野菜、麺を炒め直に鉄板焼きの上で出来上がるおいしいソース焼そば、お好み焼き、南と北とではスープの色も味も違うラーメン、そば、うどん。高速列車の中には今や必ずあると行って言いコンセントのプラグ、モスバーガー、狭い敷地にしっかり計画されてたてられた世界でも名の知られた日本の建築家による新しい建築物、動く巨大ガニ(by道頓堀)、ウォシュレット、駅ビル...と数知れず。これらがイタリアにもあったらいいなぁ〜という、楽観的な欲求とも言えるので、彼の場合はひらがなで表記し“のすたるじあ” もしくは“のすたるじぁ”とした方があったらなぁ〜という雰囲気が更に伝わってより良いかもしれません。

そんなMIRRO2の日本への“のすたるじぁ”No.1の座に輝くのは...

『自動販売機』だそうです。って...なんで?

がんばれミラノの自販機!

日本横断中、MIRRO2はあらゆる自販機を試しました。(ほぼ毎日、駅から自宅までの道のり、彼の道連れはその時自販機で買う事の出来る、あらゆる種類の缶コーヒーでした。)電車の切符に関しては、すべてどの種の鉄道にチャレンジするにあたっても自ら自販機の前に気合いを入れて立ち、路線図とボタンを解読して一枚の切符を購入することに情熱を燃やし(ラッシュ時には出来ない技ですが)、コインロッカー(イタリアと違ってほぼすべての駅にある事にまず感動。)のための小銭もしっかり用意。日本の自販機は100発100中!お札を入れてもおつりが間違えなく戻ってくる。更にJRではカードでピッ!とするだけで買える自販機がある( Suica対応自動販売機)。携帯で買える自販機がある。彼に言わせれば日本はまさに自販機ワールド!なのです。

勿論ミラノにも自販機はありますよ。特に2006年あたりから、市内交通機関の自動改札化(2007年現在ほぼ全駅)に伴いじわじわと切符の形式が代わり、新しい切符の自動販売機は新しいだけに故障の確率は少なく、更に定期の更新もできるという画期的な変貌を遂げております。(日本のそれと比べると台数も少なく、やたら一台が無駄にデカイ感じはしますが。)ただ、国鉄の自販機はまだよく故障しますし、たまにおつりが出なくて代わりに金額を明記したレシートが出て来て、窓口でおつりをもらわねばならない事態に陥る事も。駅や空港など警備体制が比較的整っている場所には、自販機があります。オフィスやお役所、病院などにもコーヒーやお菓子の自販機がちゃんとあります。しかし街中で自販機を見る事は残念ながらあまりありません。なぜってそれは、いわば小銭と商品が入ってる貯金箱を放置しているのと同じ事ですから!壊されるというリスクが儲ける事より先に立ち、日本のようにはいかないのです。逆に日本ではコンビニの前にも自販機があり、まるで待つ時間が数秒しかない人、言葉を交わして商品を買うのが面倒な方はこちらでどうぞ!といわんばかり。ちょっとやり過ぎ?という気もちょっぴりします。
先日、cadorna(カドルナ)という主要駅にて珍しい自動販売機を発見しました。フレッシュ乳製品の自販機です。日本には牛乳屋さんの脇に設置している所もありますよね。しかし...やや、ミラノでは初めてお目にかかりました。値段もスーパーとくらべてもそこそこ良心的。軒並みの食品の値上がりや、法改正など色々な要因があってこういった販売形式が脚光を浴びて来た?とも言えるのかもしれませんが、勉強不足ではっきりとした事は言えません。今度から乳製品の話題にもちゃんと目を通さなければいけませんね。朝食ヨーグルト派にはうれしい事にヨーグルトも買えます。何より生鮮食品なのでちゃんと品質管理をしているわけ(筈?)ですよね。前向きな姿勢を感じますね〜。

乳製品自販機をカメラに収めながら、夏にスイスの国境に近いボルミオという街に行った時、道中思わぬ所で牛乳の自販機を発見した事を思い出しました。こちらの場合は絞り立ての牛乳を、持って来たペットボトルに好きな量を選んでシュワッと入れてくれるというもので、友人と「実は機械の中に牛が入っているのだろう!」などと冗談を言って通り過ぎたものです。そう、イタリアでも治安の良い所には自販機が町中に存在するのです!自販機は安全のバロメータ!?いつかどこの都市でも自販機が見られる治安の世の中になるよう、心より願うMIRROメンバーなのでした。


写真1:cadorna駅構内。光り輝く自販機発見。

写真2:中には乳製品が。お金を入れて商品を選ぶと扉が開く方式。こちらの自販機の多くは、中身が見えるこれと同じ方式のものなのですが、安心感もあるし、パッケージデザインがよろしければそれだけでGood Design

写真3:ヨーグルト80cent.1リットル牛乳1ユーロ50、半リットル80cent.

写真4:どうやらミラノの主要地下鉄駅各所に置かれているようです。お試しあれ。

10/01/2007

2007.10 もう一度勉強してみる?

寒さ増す今日この頃。もう一度勉強してみる?

10月に入り、開き深まるミラノの風景などもお伝えしたい所だったのですが、ミラノ大聖堂前に漂う焼き栗の香りを置き去りに、一気に冬になってしまいました。寒くて肩こりがはじまる人も、早速流行りの風邪をもらって(今流行っている風邪は、熱が相当出る、鼻に来るという、会社・学校お休み必須の強力なものらしいです。こちらに来られる方は、気を付けてくださいね。)しまった人もいたりして、これからの寒さを考えると眉間にしわがよってしまいそうです。
 冬ごもりするわけにはいきませんが、この時期、家にいる時間が多くなる事はたしかです。そんな出不精時間を勉強に使ってみるというのも、なかなか良いのでは?と思う今日この頃。さて、ならば何を勉強するかと言うと

 やっぱり英語なんだよねぇ

前回も冒頭で触れましたが、イタリアの新学期は9月に始まります。夏休み中にリラックスした分、秋はみんなやる気に満ちて、新しい習い事のコースもほとんどが9月・10月に開講します。そんな中で人気が高いのは、趣味よりは実益を重視した語学コース。特に今注目されている言語は、やっぱり英語なんです。
 イタリアってイギリスも近いし、結構みんな英語喋れるんじゃないの?(“近い”の距離がどれぐらいかは考えず、日本より近いという意識)なんて私もはじめはいい加減な事を思っていたものです。しかし、イタリアってきちんと地図で見てみると、陸続きの隣国はフランス、スイス、オーストリアにスロヴェニア。どれも公用語として英語を使っていない国ばかりです。そんなイタリアも近年は小学校から英語教育を積極的に取り入れているようなのですが、以前は英語かフランス語のどちらかが必修だったり、オーストラリアに近い地域はドイツ語が(今でも)必修だったりするので地域によっても情勢によっても、そして年代によっても状況は違う様。英語が苦手なイタリア人に、「イタリアでは同じアルファベット(少し違いますが)を使っているから、私が英語を覚えるより、君達が英語を覚えるほうが簡単でしょう!」と言うと、「そりゃ読むのは簡単さっ!でも文法が違うでしょ。イタリア語はラテン語に属する言葉だから、同じ起源のスペイン語、フランス語は案外簡単に覚えられるけど。」との返事がかなりの確立でかえってきます。さらに、「こっちで会ったドイツ人は、ほとんどみんな英語が喋れたみたいだよ。」なんてうっかり言ってしまうと、「英語は“アングロサクソン語”でしょ。ドイツ人にとってはおんなじ種類の言葉だから覚えやすいんだよ。」と尽かさず返されます。皆口を揃えて言うのが「英語を読むのは簡単。でも何といっても発音がね時間があれば勉強したっていいけどね。」私の知り合いは皆が皆映画好き。見る映画と言えばハリウッドものがやはりメイン。それもあって英語に興味があるのは確実。しかし、どの国に行っても大人はなかなか時間が取れないのです。とは言うものの、話しながら“近くに米軍基地があるのがいやだから覚えない!日本から離れなきゃ良いだけの話でしょう。”なんて言っていた、高校時代の自分が思い浮かんだりもします。みんな興味はあるんです。興味だけは

 マカロニ・イングリッシュって?

「英語やっときゃ良かった!」とこちらに来てから強烈に後悔することが多くなりました。英語がまずバッチリで、イタリア語がそれなりで、母国語が日本語だったら、仕事の時にも相当良いアプローチが。でも私は英語が苦手です。そう、「記憶力がねぇ。そして何と言っても発音がねぇ。」
 いつまでも無いものねだりをしていちゃだめだと、一瞬こちらで市役所が主催する英会話コースを受講してみました。が、結果は散々。出席が今ひとつ出来なかったことも理由のひとつですが、イタリア人の英語の発音がわからないっ!Rはとにかく舌巻きますし、中の下のクラスだったので、英文を読み上げるとみんなイタリア発音の英語を連発。Begin=べいじん our=おぅる なんて当たり前。とりあえず高校までは何とか納めた英語の日本語発音が、いま、私の中で音をたてて崩れつつあります。イタリア語読みの英語。これこそが噂に聞いたマカロニ・イングリッシュ!

コマーシャルも的をついています。

先月まで頻繁に放映されていたコマーシャルがありました。あるイタリア人男性観光客が、イギリスのあの2階建てのバスに乗り、運転手に“Good morning!”と話かけるといったありきたりの何のひねりもないCMなのですが、その“グッドモーニング!”の発音の仕方が、“ゴォォドモルニング!”となるわけです。その彼の発音を聞いて、バスの運転手は急ブレーキを踏み、全乗客はのた打ち回ったあげく、倒れ、後続の自動車が衝突しと、大変な騒ぎになるわけです。これは、確か新聞と提携したある英会話教材のコマーシャルだったと思うのですが、コミカルな上、痛いところをしっかりついているので、反響はかなりあったのではないかと思われます。実際に電車の中で、買いたてホヤホヤの同教材のパッケージを、じっくり眺めている人を見かけました。
 私がみた限りではありますが、ある目的を持って勉強を始めるイタリア人は、相当ガンバルし間違えても笑ってやり直すし、とにかく積極的です。あぁダメだ、通じない~!と、あきらめてしまう私にとっては、そんな彼らの姿勢を見ると反省することしきり。通じなくても話しかける。わからなければわかるように他の言葉を見つけて話す。もしくはつかさず次のターゲットを見つけて話しかける。ジャパ二一ズイングリッシュと言われようが、マカロニだろうがスパゲッティだろうが、あきらめないことが、何と言っても語学習得の第一歩なのですな~。


写真1:マカロニに人がつぶされる!ダイレクトなイメージの英会話学校ポスター。

写真2:日本でも有名なある英会話学校のポスター。イタリアで英語というとやっぱりイギリス英語なのです。

9/01/2007

2007.09 しまった16日までだった!


夏休み、バカンスのシーズンを過ぎて秋空深まる9月。“何処に行ってきたの?” “バカンスはよかったなぁ~。”という会話がこの国の仕事始め。2週目からは学校も始まり、(日本と違ってこちらの新学期は9月からなのです。)路上駐車の車もみるみる増えてまいりました。そんなあわただしい雰囲気の中、目をつけていた展覧会が911日、そして16日で終了!という事にいま気付きました!しまった!!

 誰もが知ってるイタリアのデザイナーといえば

そして“見逃しそうな展覧会“は、ミラノ中央駅前のクッキリ目立つ高層ビル、日本でも有名なタイヤ会社のピレッリ社のオフィスとして60年代に建設された“ピレッリビル”を設計した建築家でありデザイナーといえば言わずと知れた、Gio' Ponti(ジョ・ポンティまたはジオ・ポンティ)の展覧会。domus(ドムス)という雑誌の創刊者といえば、

もっとわかりやすいかもしれません。今回の展示は“Gio Ponti Designer”というタイトル、概要には1920年代からのテキスタイル、陶器作品の展示など約70点の展示とある。という事は、デザイナーとしてのプロジェクトをメインに展示しているはずなので、これまた見逃せない。ちなみにジョ・ポンティの命日は、1979年の916日とのこと。展覧会の最終日を決めるにあたって、何かしらの配慮があったのだろうか?

 話題性一番の展覧会

おなじく16日まで、同じ会場で行われている展覧会にコロンビアの画家ボテロ(Ferroni Botero)展がある。フィレンツェで学んだ事からか、イタリアでは取り扱い画廊も多く、人気の画家ボテロ。イタリアのみならず、ニューヨークMOMAをはじめパリやベネツィア等各国各地でその作品を目にすることができ、アジアでもまさに日本で開催された、2004年恵比寿ガーデンプレイスでの展示が皮切りとな

り、その名を知られるようになったとのこと。実は私もこちらに来るまでこの作家の名はしらなかった。しかしその独自のスタイル、インパクトある表現方法は、一度見たら忘れられない。彼の手にかかると、動物も、男も女も子供もそして花までも、ボッテリとふくよかな体系になってしまう。メルヘンか、はたまたルソーのような素朴派の影響を受けたのか?と一瞬思える画面なのだが、時事問題にも敏感でありつづけ、故郷コロンビア内戦の事実を訴える作品をシリーズとして制作するなど、強烈な政治的メッセージをも恐れず表現するもっとも画家らしい姿勢を崩さぬ画家なのである。甘い曲線の登場人物を現実の悲劇になぞらえるギャップが、何とも不気味なリアリティをかもし出し、何とも不思議で不気味でもある。会期中はボテロの彫刻がDUOMO周辺に設置され、大人気。私が彫刻の前を通ったときも、何組もの観光客が彫刻の前で記念撮影を行っていた。会期を過ぎても探せば必ずミラノに限らず、世界中どこかのギャラリーで、ボテロの作品を展示しているところが何件もある筈。興味のある方は、探してみてくださいね。日本にもおそらく数点は入ってきている事でしょう。

 私自身は今一つ、このボテロのスタイルをじっくり見てみたいと思えないため、野外彫刻のみで満足しているとしたいところ。しかし今回の展示では150点余りのボテロ作品が集結とあるので、好奇心はある。絵画の世界をもっと知るためというよりは怖いもの見たさで、時間が許せば行ってみるべきか。

まだ余裕がある!しかし気は抜けない。

 ここまで、今このブログを読んでくださっている皆さんには、過去の情報をお届けしているわけなのでお詫びしなければなりません。お詫びのかわりにまだまだ余裕のある展示をひとつご紹介。

 もう見逃すまい!同じくパラッツォ・レアーレで行われている1111日終了の展覧会。(いまこの記事を書きながら、展示会期をつかさず手帳に書き込んでいます。反省の現われともいえる行為!)その名も“Italian Art 1968-2007。イタリアの現代作家200点以上の作品が一挙に見られる素晴らしい機会。主に平面作品が展示されるという所も、映像や立体に押されがちな現在のアートシーンから見ると、魅力的な要素です。イタリア近・現代作家にまだうとい私にとっては、まさに勉強するチャンス。バカンスでスタートダッシュが鈍った9月、後半挽回しなければいけませんね。


展示情報
イタリアンアート 1968-2007 Arte Italiana 1968-2007. Pittura
会期:20071111日まで
場所:パラッツォ・レアーレ Palazzo RealePiazza Duomo 12


写真1ボテロの彫刻、巨大な猫。DUOMOを背景にしてもこの迫力。

写真2:ボテロ展とフェッローニ展ポスター。ジャンフランコ・フェッローニ(1927-2001)展も行きたいのですが

写真3:パラッツォ・レアーレ。過ぎゆく展示の情報が。“Italian Art 1968-2007”と共に知られざる画家“マリオ・カヴァリエーリ展”は1111日まで!

写真4:展示会場付近にはよく行くものの、なかなか開館時間内に行けず。ミラノの秋の夕暮れ空です。

8/01/2007

2007.08 イギリスの強さを借りて、寄り道を。

イギリスの強さを借りて、寄り道を。

前回7月の記事でも“行き当たりばったり旅行”の事を書きました。行き当たりばったり精神に、少し計画性が加わると、さらに旅は楽しくなります。ちょっと前までは高かった航空券も今は、どこでもそれほどでもないですね。そしてヨーロッパ在住の強みは、近隣の国に国内旅行と同じ(もしくはそれ以下!)予算で行けてしまうこと。ヤッホー!

 英国の激安航空会社

格安航空会社の代表的存在“ライアンエアー”。20100ユーロが定番ですが、時折2ユーロ、5ユーロなんていう恐ろしい価格の航空券も見られる価格破壊の先頭を切って走っているイギリスの航空会社です。勿論空港税や荷物の数、保険の有無などによって最終的な価格は変わってくるのですが、それでもやっぱり安い!今回夏休みを利用して、“憧れの英国旅行を激安で”をモットーに、色々な角度で格安航空券を検討してしました。まずは格安航空券の総合サイトで日程と値段の関係を検討。税金を込めた最終的な価格がどのサイトで購入すれば一番安くなるのかを割り出し、ryanair.comで直接購入するのが一番お安いと確信。そしてライアンエアーサイトで航空券を探してみると、ミラノ-ロンドン間のチケットと、ミラノ-ベルギー(BRUSSELS)-ロンドンと2つ飛んでみた場合の価格がほぼ同じ、そしてその方が激早朝の6時の便や夜中の0時に着く便に乗らなくとも(これも激安チケットの理由のひとつ!)その日の中の良い価格帯のチケットを入手できる事がわかりました。ベルギー・BRUSSELS…街の面積に対して美術館の密度が大変高い街。これは寄り道しないわけにはいかないでしょう!

 なるべく安くも見極めが大事です。

結局のところまたもや“行き当たりばったり”と憧れで決めた旅先。しかし、今回はここで妥協すると激安旅行の目的が失われてしまうので、Booking.comというホテル予約サイトでお安いホテル(朝食抜きで275ユーロ。ロンドン行きの便は845分発なので、朝食はどちらにしてもホテルではとれないでしょう)をあらかじめ予約。トータルで考えても直行ロンドンとトントンのお値段で収まりました。インターネットって本当に素晴らしいですね。
 さてさて、BRUSSELSに到着。さすがに旅立つまで仕事(バイトです)に追われ、当日の予定は白紙のまま。目ざとくインフォメーションで観光地図とガイドをもらい、空港からBRUSSELSMidi駅までのバスの中で計画をたてます。100の美術館ガイドというページがあり、さらに美術館入館券(市内のほぼ全美術館にて有効)と市内の交通機関の切符がセットになったパスを発見。1日有効券は20ユーロで、これはお得!と思いましたが、街に到着するのはお昼ごろ。美術館の閉館は5時~6時というところがほとんど。入場券も5ユーロ程度のところがほとんどなので、これはお得か微妙なところです。きっと最高2館で終了してしまうだろうと考え、入館料は個別に支払いバス、地下鉄、トラムの一日有効券(4ユーロ)を購入することに決めました。

  やっぱり本物は味が違う!

 日本でも2006から2007年春にかけて、大規模な400年記念展が行われた“ベルギー王立美術館”。ルーベンスやヴァン・ダイクなどの古典絵画と、ポール・デルヴォー、マグリットを初めとする近代絵画の巨大なコレクションを有する美術館です。有数の名画をそれだけ数多くもてるということは、しっかり保管できる場所を有しているということを意味しますね。さて、行ってみるとホントにデカイ!!入口からして広く、はじめのフロアーからダビッドの巨大作品を拝むことができます。直進すると古典絵画コーナー、右に折れてエスカレーターに乗ると近代絵画の展示コーナーになっています。

 ショートケーキ(が好きな場合ですが)を食べるとき、イチゴを最後に残すか全部を満遍なく食べるか、イタリアではこんな表現があります“Mettere la ciliegina sulla torta”ケーキの上にさくらんぼをのせる。ケーキの上に小さな赤いさくらんぼをのせることで、最後の大事な仕事を終える。最後の一番大事な場面を表現する言い方ですが、感動的な瞬間を最後に残す、という場合に使っても良いようです。イチゴの場合はケチというか“もったいない精神”が表れている感じがしますが、こちらのさくらんぼ表現の場合、感動を待ちわびるドラムロールが、その瞬間が近づくにつれ聞こえてくるようなワクワク感があるような気がします。

 で何を言いたかったか、と申しますと、ほとんど全ての作品がメイン作品といえるこの美術館において、さくらんぼを決めるのは至難のわざ。しかしここは、やっぱり何といってもブリューゲル!(ピーター・ブリューゲル父。ちなみに同名の息子の作品も、父の作品と同時に見ることができます。)若くしてこの世を去った天才画家として、日本でも知らない方を探すほうが難しいほど知られ、その作品は世界中に散らばっていますね。しかしここブリュッセルに住み、最後のときを過ごしたというだけあって、ここのコレクションは見逃せません。
 まずは近代絵画ゾーンを駆け足でまわります。しかし、駆け足なんてそんなにうまくいくわけもなく、大好きなアンソールの作品の前で驚愕の声を挙げ、やっぱりマグリットの前でたたずみ、ダビッドの『マラーの死』ってここにあったのか!!と動揺していたらあっという間に時間は過ぎ、やっと古典絵画ゾーンに戻った頃には2時間半が経過。ここはとにかくブリューゲルゾーンに直接突入。無関心な人々の描写の片隅に、ひそかに墜落している『イカロスの墜落』恐ろしい化け物集合の『反逆天使の失墜』息子の模写と比較して楽しめる『ベツレヘムの戸籍調査』『謝肉祭と四旬節の喧嘩』ちょっと離れた場所に『聖マーチン』etc…やっぱり本物は凄い。後ろ髪引かれながら移動しようと思いきや、すでに時計の針は430分。それでもがんばって5時半まで開館しているアール・ヌーヴォーの巨匠ヴィクトル・オルタの家に行ったところでタイムリミット。その後遅くまでねばって、美術館近くに散らばるオルタの建築作品を探し歩いたのは、いうまでもありません。いや、歩きすぎて足が筋肉痛になってしまいました

写真1:これが噂のライアンエアーです。

写真2:ブリュッセルの中心街。

写真3:ブリューゲルの絵を、鑑賞する人と模写する学生さん。観ることに対しての目的が違う人々。(ベルギー王立美術館)

写真4:ブリューゲル。現代絵画をも圧倒する迫力があります。