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2/01/2008

2008.02 ミラノは汚染されている?!


 最近引越しをいたしました。ミラノからはちょっと離れましたが、国鉄で一時間圏内(電車が遅れなければの話ですが)。引越しを思い立ったのは、今年がアパートの契約更新の年であったこと、ミラノは家賃が高すぎること、スモッグがひどいこと等、数え上げると限りなくなってくるのですが、ともあれ何とか落ち着いたところです。そう、ミラノの公害は毎度大変な問題になっています。空気汚染が主たる問題なのですが、その汚染の根源は聞くところによると暖房設備などによるもの。自動車の排気ガスも勿論ですが、一番は古い建物が個々の家庭でコントロールできない古いタイプの暖房設備を未だに維持していることではないか?という人が結構います。しかし、それはさておき自動車の排ガスが一番の問題!として(それも勿論一理あるのですが)今年から“エコパス”というものが導入されました。自動車の新車(過去2年内)はエコパスゾーン(ミラノ中心部)への侵入無料、それより古い車はお金を払ってパスを買わなければエコパスゾーンに入れません。規定より古い車はお金を払っても入れません。入ったら罰金!だそうです。多くの人がこのシステムに関して不服を持っているようで、色々な噂を耳にします。エコパスゾーンはかなり小さな範囲。それに規定の時間外なら侵入できる。どう考えても公害を抑えるという目的に適う対策とは思えない!お役所の懐を潤すためのものだ!と言う人、新車を買えない年金生活者で、エコパスゾーンに住んでる人はどうするの!!と言う人などなど様々な論議をかもし出しています。

 時間をかけて修復中のミラノの隠れた宝。

確かにこのエコパス、エコという名前が付く限りはその目的をちゃんと果たすようになってほしいものです。ミラノから少し離れると、確かに空の色が違うような感じがします。建物の壁が同じ材質でも、ミラノのそれほど灰色がかっていないような感じを受けます。過去ミラノ名物であった霧は、一歩前が見えなくなるほどのレベルでめったにこの都市を覆いつくすことはありません。やっぱりミラノの汚染はどうにかしていただきたい問題なのであります!特に歴史的な建造物の保護に、大気汚染って相当なダメージを与えてるのは明らかですよね。何年にも渡って修復が行われているミラノ大聖堂も、磨いた所は美しい大理石の色がまぶしいのですが、古い部分はホントに灰色。修復をはじめたスタートの部分は(それがどこかは知らないのですが!)きっと今、すでに少しずつ黒ずんできているのではないでしょうか?そうだとしたら、この修復って永遠に終わらない大事業になっちゃいますよね~なんて考えたりもして。

そんなグレーな街、ミラノ。イタリア人でもミラノに観光で行くのはナンセンスだ、なぜなら“ミラノは“大聖堂”を見ればあとは買い物だけだものね~”なんて言ってる人がいます。でもまってちょーだい。結構見所はあるのですよ。その一例を今日はちょっとだけご紹介します。微妙に有名なので既にご存知の方もいらっしゃるかと!

サン・マウリツィオ教会 ~Chiesa di San Maurizio al Monastero Maggiore

この1500年代に建築された素晴らしい教会は、とってもアクセスの良いMagenta通りに位置します。ミラノサーローネに行ったことのある方には、きっと馴染み深い乗り継ぎ駅のカドルナから徒歩数分。外装は大変地味ですが、お隣に考古学博物館(以前は修道院の建物だった)があるので発見しやすいかと。なんと言ってもこの教会にはルネッサンスの巨匠、ミラノ、ロンバルディア州ゆかりの画家ベルナルディーノ・ルイーニBernardino Luini1480-1532)の作品があるのです。教会内にはルイーニ他多くの画家によるフレスコ、油画等が盛りだくさん!ごそっと壁面を覆いつくしています!話はそれますが、私がイタリアに来てはじめてきちんとルイーニの作品を見たのは、何故かイタリアではなくミラノから電車で二時間ほどのスイスの湖畔の町ルガーノのSanta Maria degli Angeli教会でした。“十字架の道行”を描いた大作、絵が教会の中にあるのか教会が絵を覆っているのか解からなくなるほど、その存在感は凄まじく、随分長い間ボーっと眺めてしまった事を覚えています。
 サン・マウリツィオ教会、いまだ修復中なので、一歩教会に足を踏み入れるとすぐに修復のための足場が絵の前に立ちはだかっております。しかし諦めないで、しぶとくその隙間をぬってほぼ全部の絵を見ることは可能です。それら足場に遮られ、さらに奥にまだ見所(l'Aula delle Monache)がある事を忘れてはいけません。奥に入ってすぐ目に入る部分、いわゆる正面には星空の中心に神が描かれ、周囲に四福音史家(福音書記者)と天使のイメージがあり、突然パッと目前に銀河が広がるような気分になります。

さらにその外側には受胎告知のイメージが描かれているのですが、天使ミカエルが左端、聖母マリアが右端のぎりぎりの所に配置されているので、お互いの距離が大変遠い!(うんと離れて今一度全体を見る事をお勧めします。)遠くはなれているけれど、天使側からマリアに向かう小さな天使がいたり、両者の微妙な動きがお互い呼応するように工夫されていたりと、つながりがよくわかる様に描かれていて大変面白い作品です...と、前方だけではなく後方にも見逃せない“最後の晩餐”や“ノアの箱舟”を描いた部分がありますので、閉館時間ぎりぎりではなく、じっくりゆっくり鑑賞できるように余裕を持って訪れる事をお勧めいたします。時折無料コンサートなども行われるそうなので、運良くあたったらこれまたしめたものですね。

ミラノの教会はミラノ大聖堂とサンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会を見れば十分!と思っている方、この他にもまだまだ隠れた見所がありますよ!ぜひ一度、素通りせず、ミラノにもじっくり腰を落ち着けて滞在してみてくださいな。

【サン・マウリツィオ教会 Chiesa di San Maurizio
マジェンタ大通りCorso Magenta 15
地下鉄カドルナCadorna駅下車
開館日時:火-9:00-12:0014:00-17:30 月曜日:休館
200712月の時点では上記の開館時間でした。祝日やコンサートなどの時、もしくは修復具合や夏冬と、時間が変更する可能性があるのでインフォメーション等でご確認くださいね。
Wikipedia
サン・マウリツィオ教会の記事があります。http://it.wikipedia.org/wiki/Chiesa_di_San_Maurizio_al_Monastero_Maggiore

【お知らせ】

翻訳をお手伝いした本が出版されました。公害について今回触れたので、ちょっと関わる部分があるかも?(無理やりですね。)都市計画に興味のある方にはお勧めです。

「都市を癒す術」ピエル・ルイジ・チェルヴェッラーティ ()


http://www.jbook.co.jp/p/p.aspx/3498177/s/




写真1:左:教会内、現在修復中。中:教会奥へ行くにはこのアーチをくぐります。右:神、福音書記者、天使の壁画。
写真2:ノアの箱舟。とても具体的に描かれています。
写真3:最後の晩餐です。(レオナルドではないですよ!)